2011年4月22日金曜日

“ハガネのような強い精神と、咲く花のようにやさしいこころを持て。” 伊集院静氏が綴った「ハガネ」と「花」の真意。

 あの地震は仙台の自宅で執筆中に起きた。「3日目、インターネットがつながった。被災者がまず求めたのは水、次に情報、3番目が歌。1行の詩が欲しいと思ったんだ。避難所で『上を向いて歩こう』に勇気づけられ、『アンパンマンのマーチ』で子どもに笑顔が戻った。言葉の力だ。東京人に聞いたら、欲しいものは暖房って答えるんじゃないか。東京はひどかった。買い占めに走った。親が悪い。娘が買ってきたら、そんなもの返してこい!と言うべきだ。つらい思いをさせないでどうする。それが教育じゃないか」

 たばこに火をつける。目が悲しそうに笑っている。大きく煙を吐き、インタビューは続く。400ページを超える長編「いねむり先生」を読み終えたら、1本の木がすっくと立っていて、ただ風が吹いている、そんな感じがした、と言ったら、「それはうれしいな」と照れた。「色川さんはふいに眠りに落ちたり、幻覚に襲われたりと僕と似たような悩みを抱えておられた。そんな師にギャンブルの“旅打ち”に誘われ、次第に絶望から救われたように、人間、誰かに手を差し伸べ、つながっていくしかないんだ。被災者の人たちもそうだと思う。絶望にひたることはないんです」

 この4月1日、サントリーの新聞広告に新社会人へ向けた伊集院さんのエッセーが載った。山口瞳さん時代から欠かさず読んでいる。くたびれた中年サラリーマンの刺激にもなる。題は<ハガネのように 花のように>。大震災後に執筆されたものである。

 <新しい人よ。今は力不足でもいい。しかし今日から自分を鍛えることをせよ。それが新しい社会人の使命だ。それが新しい力となり、二十一世紀の奇跡を作るだろう。ハガネのような強い精神と、咲く花のようにやさしいこころを持て。苦しい時に流した汗は必ず生涯のタカラとなる。ひとつひとつのハガネと、一本一本の花は、美しくて強い日本を作るだろう。美しくて強い日本人、職場を作ろう。その時こそ笑って乾杯しよう>

 どうして、ハガネと花?

 「鉄、ハガネを東北は大切にしてきたんだ。塩釜も釜石も。南部鉄も有名だ。鉄工所が多いんだ。東北の象徴なんだ。そして花もまた東北の象徴なんだ。たとえば、青森のねぶた。なんで背中にまで花を背負って踊るのか? 夏が短いからだ。だからこそ、花のよさを知っているんだ。そのふたつを入れたくてね」

特集ワイド:巨大地震の衝撃・日本よ! 作家・伊集院静さん - 毎日jp(毎日新聞)

うつしておこう。今年ことさら新入社員だけのものではない広告。コピー。


ハガネのように 花のように
伊集院静

新社会人おめでとう。
君が今立っている職場が、君の出発点だ。
さまざまなことが起きている春だ。
働くとは何か。生きるとは何か。日本人皆が考え直す機会かも
しれない。世界中が、これからの日本に注目している。彼等
が見つめているのは日本人ひとりひとりの行動だ。日本人の
真価だ。国家は民なのだ。ひとりひとりの力が日本なのだ。
力を合わせて進む。しかし力を合わせるだけではダメだ。
一人の力を最大限に出し、強いものにしなくてはいけない。

新しい人よ。今は力不足でもいい。しかし今日から自分を鍛
えることをせよ。それが新しい社会人の使命だ。それが新し
い力となり、二十一世紀の奇跡を作るだろう。ハガネのような
強い精神と、咲く花のようにやさしいこころを持て。苦し
い時に流した汗は必ず生涯のタカラとなる。ひとつひとつの
ハガネと、一本一本の花は、美しくて強い日本を作るだろう。
美しくて強い日本人、職場を作ろう。
その時こそ笑って乾杯しよう。

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